大塚駅について
普段からスマホを持って行動するようになってしまった僕たちにとって、東西南北の意味は薄れがちかもしれない。
たとえば場所を調べるときに「●●(ランドマークの名前)の北」と意識しないのではないだろうか。「●●の近く」とさえ認識しておけば、あとは適時スマホで調べてどうにかなるし。
だけれど、それを毎日意識させられる空間がある。駅だ。
地下鉄でなければ、駅の出口は大抵方角の名を冠している気がする。添え物のように括弧でくくられているときもあるけれど、それでも大抵はついている。その名前を見るときが、僕らが方角を意識する数少ないタイミングなのだ。
大塚駅はその点において、非常に優秀なつくりをしていると思う。
一つしかない改札を抜けると、右手が南口、左手が北口。南北の行き来に改札を抜ける必要があったり、地下に潜ったりする必要がない。
これ以上なくシンプルだ。この駅に降り立った人はどちらかの出口に向かうことになる。どちらかだけを覚えておけばいい。そしていずれの出口も抜けるとまずは開けていて、そこは道が放射状に広がっているから、目的地への方向がわかりやすい。
ごちゃっとしたタイプの駅だと、駅前に余裕がないというか、出たら目の前にコンビニがあったりして(しかも複数ある出口のそれぞれに同じコンビニがあったりして)、自分の向いている方向に自信が持てなくなる。
大塚ではそれがない。
これがいいなと思うのは、家に友人を招くときだ。「南口を出て左の方へ」と案内するだけでまず間違いがおこらない。
駅は動きの起点にあるからこそ、向いている方角をイメージさせやすいことが、いい駅の条件だと思う。
大塚はいい駅だ。